ハネ太

ハネ太

Release date 2002. 05

あらすじ

漫画家が主人の知多家は練馬区に居を構える。知多夫妻に三男二女、隣に元気なおばあちゃんが住み、犬一匹小鳥二羽の大家族。そんな知多家に新車が納入され、次男と三男が試運転兼ねてドライブに出かけたところ、運悪く道を横切る猫をハネてしまったからさあ大変! 縁(?)あって知多家の家族に加わった猫・ハネ太と家族…ちば家に起こった実話を基にしたドタバタ笑劇場開幕!

大家族に突如やってきた猫のハネ太。家族とペットが織りなす日常の喜劇をユーモラスに描いた本作は、癒し・笑い・共感をくれる名作です。ちばてつや本人をモデルにした希少エッセイマンガを、ぜひお楽しみください。

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みどころ

みどころ1

マンガ家の“裏側”が見える希少エッセイ

『ハネ太』は単なる「猫マンガ」ではなく、家族と日常の関係性を描いたドキュメンタリー。ちばてつや自身の家庭を題材にしているため、“裏話”を覗き見るようなワクワク感も大きな魅力です。大所帯の知多家(ちば家)には、夫婦に3男2女の子ども、さらには元気なおばあちゃんや犬・小鳥・魚たちまで!

そんな日常を垣間見る本作からは、核家族が一般的となった現代では珍しい、雑多でにぎやかな空気感が楽しめます。大家族ならではの小さな衝突、笑いと涙の繰り返し。そこに加わった猫・ハネ太により、家族や物語はさらに複雑に、温かいコミュニケーションを織りなしていきます。

自由奔放、野性味あふれる気まぐれな性格のハネ太。新しい家族に振り回されつつも、それぞれの日常を生き生きと過ごすキャラクターたち。主人公・知多てつやのマイペースさ、妻・ユッコの動物愛、コミカルな性格の子どもたち、それぞれが「知多家の一員」として、実にうまく役目を果たしています。ハネ太を中心に、個々のキャラクターが構成する人間模様は必見です。

昭和の下町的な人情を思い起こさせる本作は、何よりも「家族の温もり」を感じられる名作。肯定的に描かれる家庭内の“ゴタゴタ”を、ぜひお楽しみください。

みどころ2

マンガ家の裏側と、「まさか」の人たちが登場!

「イージー会(イイ爺会)」と呼ばれる仲間内でのゴルフ旅行に登場するのは、“まさか”のあの人たち。さいとう・たかを氏、北見けんいち氏、つのだじろう氏、高井研一郎氏、藤子不二雄Ⓐ氏、古谷三敏氏などの、実在する大御所マンガ家たちとのエピソードから、彼らの友情や業界の裏話が垣間見えます。

締め切りに追われる仲間もいる中でも、仕事の話はタブー。それが彼らイージー会のルールです。締め切り直前の修羅場と、ゴルフに興じるマイペースな姿の対比がユーモラスに描かれており、マンガ家ならではのプレッシャーと自由奔放さが読み取れます。ちばてつやファンはもちろん、日常系マンガを愛する読者も楽しめる要素がたっぷり。ハネ太や家族との日常と並行して描かれる巨匠たちとの交流は、プライベートを覗くようなワクワク感が楽しめます。家庭と業界文化という異なる世界が交差する場面は、本作における唯一無二のスケールを持つシーンと言えるでしょう。

知多家の父親はマンガ家という特異的な職業により、仕事場と家庭が地続きで存在するユニークさが見られます。自宅と仕事場を行き来しながら締め切りに追われる父親、編集者からの電話──普通の家庭では見られない光景も、この作品ならではの貴重なワンシーンです。

みどころ3

ハネ太がもたらした家族の調和

ハネ太の登場により、目まぐるしく変わる知多家の日常。猫アレルギーの子どもたちはくしゃみと咳、ひどいかぶれ。挙句の果てには、母から「出て行けば?」と言われる始末。犬のノノも居場所を失い、悲しい鳴き声が響き渡ります。

ノラ猫だったハネ太は知多家を抜け出して、かつての居場所に戻りますが、縄張り争いに巻き込まれてズタボロになってしまいます。そんなハネ太が行きついたのは、やっぱり知多家でした。猫アレルギーの次男・コウゾーも、思わず「いますぐ何か食べさせてやるからな」「し…死ぬなよハネ太」と必死に介抱。みんなが喜び、くしゃみをしたその日は、ハネ太が“知多家の一員”になった記念すべき日でした。

突如として生活に入り込んだ猫という存在は、家族に混乱をもたらす一方で、人間同士の絆を強めました。日常の小さな出来事が丁寧に描かれる本作は、「普通」の時間こそかけがえのないものだというメッセージが込められているのかもしれません。

さまざまなジャンルで名を馳せたちばてつやが、自身の家庭を舞台に、柔らかいタッチで描いた本作。作風の幅広さを示すとともに、懐かしさや穏やかな気持ちを思い起こさせてくれます。軽やかに読める一方で、ふとした瞬間に感じる深い余韻。その絶妙な塩梅こそが、『ハネ太』の何よりの魅力と言えるでしょう。

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