みそっかす

みそっかす

Release date 1966. 08

あらすじ

茜は名門一家上条家の三女。体が弱かったため、しばらく田舎の草介おじさんのもとに預けられ、療養生活を送っていた…。そして6年後、自由奔放なおてんば娘に成長した茜が上条家に帰って来た!行く先々で大騒動を巻き起こす茜だが、その心は誰よりもやさしく、思いやりに満ちている。明るく強く生きる茜からたくさんの勇気をもらえる物語――。

お屋敷生まれ・大自然育ちの茜と、彼女の言動に振り回される家族や学校の仲間たち。負けん気の強い茜が「大切なもの」のために大奮闘。アニメ化もされたちばてつやの名作を、ぜひ自分の幼少期を思い出しながら、マンガ本編でお楽しみください。

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みどころ

みどころ1

まっすぐ、ありのままに生きる姿

飲酒、カンニング、果ては催眠術!?
名門家に生まれながら、自然の中でのびのびと育った三女の茜。英才教育を受けてきた他の姉妹とは違い、型破りなふるまいでみんなを驚かせます。怒って、笑って、時には泣いて。素直に感情をあらわす奔放な茜に振り回されながらも、みんな彼女のことがだんだん好きになっていきます。

どれだけ立場がある人でも、お偉いさんの子どもでも、関係なく接する茜。誰とでも対等に接する正直さがあるからこそ、自分の短所にも素直に目を向けられます。ママへの反抗、姉への口答え、日々のわがまま…自分の行いを反省してすぐ行動に移せる実直な茜の姿に、感化される人は多いはず。

そんな茜の素直さを見て応援する大人も現れます。いつも優しく見守ってくれるおじさん、茜を見込んで白樺学園に入学させた理事長、催眠術がバレても応援してくれる津田先生。そして茜自身も、真面目に勉強する秀麿の姿勢に影響されて、大事なテストでは催眠術を使わず実力で乗り切るほどに成長していきます。大人たちの真っ黒な企みを見ても決して負けず、正しいことをやり通そうとする意志の固さには脱帽です。

みどころ2

繊細な心理描写と素朴で温かなタッチ

ちばてつや作品において大きく評価されるのが、作画技術です。東京の街並みや豪邸での大宴会、テスト会場に並ぶ生徒たち、どの場面を切り取っても臨場感あふれる細かな描写が目を惹きます。当時の空気感を知る人はもちろん、そうでない人にも「確かにそこにあった日本の姿」を描く本作は、世代を超えて読み継がれるべき作品と言えるでしょう。父やおじを襲った激しくも優しい紀伊の海、動物や木々の姿、リアルな背景描写がキャラクターの存在をより引き立てています。

もう一つ注目すべき点は、キャラクターの表情です。茜がベッドから落ちてわんわん泣く姿、テスト用紙に真面目に向き合う姿、自分一人だけ悪者扱いされて悔し泣きする姿など、さまざまな感情が丁寧に描かれています。一瞬一瞬、心が揺れ動きながらも必死に生きる茜の姿に、自然と惹きこまれるでしょう。

それはさながら、人間ドラマ。可憐なヒロインが登場する「少女漫画」ではなく、一人の少女が困難に立ち向かいながら成長を遂げる壮大な作品と言えるでしょう。

みどころ3

人にとって本当に大事なものとは

お金持ちの上条家で何不自由なく暮らしてきた姉妹たちは、父親の自殺・会社の倒産で大きく運命を変えることになりました。そのとたん、彼女たちをあざ笑ったクラスメイト。そして、家庭教師として北小路家に移り住んだ茜が再び上条家に戻ったとき、そこには茜が知っているママ、姉さんたちの姿はありませんでした…。

何もかも嫌になった茜が家を出て選んだのは、おじさんと過ごした紀伊。海で釣りをし、山で木の実を採り、ウリボウやリスたちの世話をして過ごした、紀伊の大自然でした。そして、亡くなったと思っていたパパも、東京の便利な生活に疲れきっていたママも、最後に選んだのは自然の中で「家族みんなで一緒にいること」でした。人にとって本当に大事なものとは、お金、地位、仕事、プライド…それとも何なのでしょうか。

味噌をこした後のかすには価値がない──仲間に入れない子どもを「みそっかす」と言います。型破りで敵が多かった茜も、周囲から腫れ物扱いされていた秀麿も、もしかすると、融通が利かない津田先生や、なりふり構わず家賃を取り立てるママも、お屋敷でひっそりしていた大型犬のチビも、みんなみそっかすなのかもしれません。しかし、味噌をこした後のかすには、栄養がたっぷり。どんなことも、どんな人も、価値がないということは決してない…そんなメッセージが、本作には込められているのではないでしょうか。

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