ちばてつや短編集 少女マンガ編

ちばてつや短編集 少女マンガ編

Release date 2016. 11

あらすじ

ママを亡くしたパパと二人暮らしの少女の切ない乙女心を描く『パパのお嫁さん』、南アフリカのジャングルを舞台に冒険へ繰り出す『ジャンボ・リコ』、養蜂家夫婦の静かな回想が胸に沁みる『風のように』──作風もジャンルも異なる1960年代の名作3編です。

sale

1巻を購入する1巻を購入する

みどころ

みどころ1

『パパのお嫁さん』──揺れ動く、けなげで複雑な乙女心

元気いっぱいのおてんば娘・エッコ。ママを亡くした彼女ですが、作曲家のパパに素敵なお嫁さんが来てほしい──そう思いながらも、パパを取られる・失ってしまうことを恐れる子ども心が感じられます。この矛盾した気持ちを、小学4年生の女の子が一身に抱えながら走り回る姿には、胸が締め付けられるはずです。

再婚することも、ドイツへ行くことも、大事なことを何も話してくれなかったパパ。音楽家として成功を遂げたパパが、どんどん遠い存在になっていく……エッコが不安な気持ちをパパと婚約者にぶつけるシーンは、大人の事情と子どもの複雑な心境が混ざり合います。
しかし、その後「パパのために」と自ら頭を下げて、婚約者の実家で教養や礼儀作法を教えてもらおうとする姿に、切なさを感じずにはいられません。

再婚相手か、わが子か──最後にパパが取った行動とは。親子の絆と愛の深さを胸いっぱいに感じられる本作。子どもにしか持てない純粋な視点で描かれる「家族への愛情」は、読む人の心にじんわりと温かさをもたらすでしょう。

みどころ2

『ジャンボ・リコ』──小さな勇気と大きな愛が動かす冒険譚

南アフリカの小さな港町・サンドバルジ。現地の人々に慕われる日本人医師の一人娘・リコは、薬の材料を探しに秘境へ行った両親の帰りを待ち続けていました。しかし、難病は広まるばかり。同じく秘境から親が帰ってこない子どもたちで探検隊を結成したものの、巨大なニシキヘビや人食い人種のタムタム族との出会いなど、さまざまな壁が立ちはだかります。

タムタム族の集落では、病気を治すためリコの仲間を生贄にしようとする老婆に対し、手持ちの薬を調合して病人を回復させたリコ。大人でも怯むような状況で、理屈よりも行動で迷信を打ち破る破天荒なリコの姿は、元気をもらえること間違いなし。

やっと会えた親たちも本来の目的から逸れ、欲にまみれた姿をさらけ出していました。その“人間らしさ”に少なからずショックを受ける子どもたちですが、一方で薬の研究を続けていたリコの両親もまた、人々を助けたいという人間らしさが描かれています。火山の大噴火が金鉱も森も沼もすべて飲み込んだ後、手元に残ったのは少しの治療薬だけ。その薬瓶を抱えて、サンドバルジへの帰路につく一行の足跡に、この物語のすべてがこめられています。
金塊はなくても薬はある、“本当に大切なもの”は何なのか──ちばてつやが少女マンガの舞台を南アフリカのジャングルに設定してまで描きたかった、勇気と愛をぜひ感じてください。

みどころ3

『風のように』──日本の自然、心を描いた美しい名作

夫婦の回想から始まる本作は、日本の四季や生き物、自然の美しさがぎゅっと詰め込まれています。
本作が誕生した1969年の日本は高度経済成長の真っ只中。作者ちばてつやは、急激に壊されていく美しい自然の行方を憂いていることがわかります。主人公は、季節の移ろいとともに、日本中を旅する養蜂家。自然を感受し、自然を守りながら生きる彼らの姿が印象的です。

そして同時に、三平やチヨ、村の人々が持つ内面の強さや美しさも随所に感じられます。初めてハチの群れが飛んだとき、そして風のように去っていったとき。家族を失って硬い表情だった三平が感情を爆発させ、村を後にしたあのとき──チヨが微笑みながら三平を待つ姿からは、哀愁ではなく希望がうかがえます。

ぺんぺん草も生えないと言われた谷に、三平の両親が眠る谷に色とりどりの花が咲き誇る風景は、自然のたくましさと美しさがこれでもかというほど描かれています。
谷の花畑も、養蜂の仕事も、二人で一緒に育ててきたものだったと気づいたとき、物語全体がもう一度違う色に輝いて見えるでしょう。日本の美しい自然と人々の凛とした心を伝える本作は、時代を超えて語り継がれるにふさわしい、ちばてつや少女マンガ珠玉の一編です。劇場アニメ化もされた本作を、ぜひマンガ本編でお楽しみください。

コミックス一覧