島っ子

島っ子

Release date 1964. 03

あらすじ

五十嵐ミチは小学5年生。パパとママと一緒にここ鬼ヶ島にやって来た。地質学者のパパは温泉の発掘に情熱を燃やし、到着してすぐに作業を開始。でも、島の人たちは協力してくれるどころか、妨害工作をしてミチたちをなかなか受け入れてくれない…。さらに、パパの助手たちが、いつまでたっても結果が出ない仕事に嫌気が差して、五十嵐家のお金を持ち逃げ!一家の島暮らしは前途多難の予感……。

表情豊かでおてんば、時にちょっぴりやり過ぎてしまうけれど、賢く立ち回るミチ。相手が誰であろうと真っすぐ立ち向かい、大好きなパパの研究をサポートする健気な姿に胸を打たれます。嵐にも負けず意地悪にも負けず、人の心を突き動かすミチから目が離せません。

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みどころ

みどころ1

キャラクターの人間臭さ

おてんばだけど頭脳明晰、乱暴だけど人情にあつい主人公・ミチ。かわいらしさと賢さを兼ね備えた芯の強い女の子を描く本作には、彼女に負けないほどユニークなキャラクターが揃っています。

いつでも人のために行動し続ける心優しい五十嵐博士、そんな博士とミチを献身的に支える夫人、生徒に慕われる実直な教師・木下、自分の利益を追求する博士の助手や島の権力者。そして、自分たちの暮らしを守るために排他的な感情をあらわにする村の大人たち。そんな誰もが持つ欲望やドロドロとした感情を一人ひとりに割り振って描いた本作は、人間臭さが何より大きな魅力です。

他所のことには関わらないという風潮やコミュニティによる排他的な考え方は、本作に限ったことではなく、今もなお現実世界にも根強く残っています。それでも島の人々との距離を縮めながら、関わり合いながら生きていくミチたち。その姿はフィクションでありながら、とてもリアルです。都会から島に移り住んだ人、都会からやって来た人を受け入れる島の人、ぜひそれぞれの視点で読み進めてみてください。

みどころ2

暮らしに垣間見える世相

フィクションでありながらも、人々の暮らしぶりはとてもリアル。上の子が何人ものきょうだいの面倒を見たり、お小遣い稼ぎのためにカニを取ったりと、昔の日本を生きる人々のようすを詳細に描いています。

そこで浮き彫りになるのが、新たな土地開発を行う際に発生する問題です。移り住んできた人たちに向けられる嫌悪、発掘作業により自分たちの暮らしが脅かされてしまうかもしれないという不安など、もともとその土地に住んでいた人にとって平穏な日々が変わってしまう影響は計り知れません。それでも先陣を切って孤島の温泉発掘に着手する五十嵐博士は、マンガが掲載された1960年代当時、確かに日本各地で「人々のために」と開発を進めていた先駆者の姿そのものです。

島を囲む荒海や豊かな森といった細かな背景描写はもちろんですが、お祭りで売られているべっこう飴、おひつに入ったご飯、お正月には日の丸を掲げたり晴れ着姿で遊んだりする当時のようすが垣間見えます。ミチと両親がちゃぶ台を囲んで食事をする風景に懐かしさを感じる人もいれば、新鮮さを感じる人もいるのではないでしょうか。

みどころ3

いつだって心を動かすのは「人」

他所から孤島・鬼ヶ島にやって来た五十嵐家を睨みながら迎えた島の人々。父は温泉の発掘作業に勤しみますが、掘った穴を塞がれたり道具を壊されたりして妨害されてしまいます。心身ともにボロボロになり、何度もくじけながら、それでも発掘作業を止めないのは島の人々のため。助手に逃げられても、全財産を失っても、機械が壊れても決して諦めません。

そんな五十嵐家の逆境を少しずつ変えていくのが、本作の主人公・ミチの真っすぐさです。相手が大人だろうと子どもだろうと関係なく自分の言葉で意見し、思い立ったらすぐ行動に移す彼女のパワフルさに周囲は感化されていきます。

たとえ「島から出て行け」と言われても真正面からぶつかり、徐々に人々との距離を縮めていくミチ。小学5年生の彼女には辛い言葉も投げかけられますが、それでも相手を真っすぐ見て言葉を発する彼女の姿勢には、思わず「頑張れ!」と言いたくなる共感性があります。お金持ちでも貧乏でも、都会っ子でも島っ子でも関係ない、人は人に心を動かされていく──「何か」が変わっていくようすを、ぜひマンガ本編でお楽しみください。

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