リナ

リナ

Release date 1960. 09

あらすじ

リナは大好きな家族に囲まれて、幸せな毎日。元気いっぱいに暮らしていた。ある夜、不気味な男がお父さんに黒いカバンを届けにやって来る。その日からリナたちの生活は一変。パイロットのお父さんは外国で行方不明になり、家はだまし取られ、お母さんまでも病に倒れてしまう!貧しく哀しい生活の中にも希望を見出し、前向きに生きる小さな女の子・リナの大きな夢あふれる物語!!

家族の不幸に直面しながらも、決して希望を失わないリナ。涙しつつも前向きに、兄妹でたくましく生きていきます。そして、二人が迎える結末とは──どんな苦難が立ちはだかってもお涙頂戴では終わらない、リナたちの奮闘記をマンガ本編でお楽しみください。

sale

1巻を購入する1巻を購入する

みどころ

みどころ1

逆境を跳ね返す人情、人のあたたかさ

父の失踪、母の病気、親戚にだまされ、住む家まで失ってしまったリナたち。絶望しながらも、助け合いながら過ごすリナと兄・稔。どんなに貧しくても、大切な家族がいれば、仲間がいればくじけず生きていけることを教えてくれます。

「お母さんのために」
寒いクリスマスの夜、はだしの母を見たリナ。足袋を買ってあげたい、お金が足りない──そんな彼女はつい、魔が差してしまいます。ですが、お店の人と警察官は彼女の健気さを知って、起こした行動を許してくれました。帰宅した後、顔を赤らめながら足袋をプレゼントするリナですが、その後罪悪感や恥ずかしさから布団をかぶってひっそり涙する彼女のいじらしさに、身につまされる人もいるのではないでしょうか。家族の愛情や周囲の人情を一身に受けて育ったリナだからこそ、道を踏み外しそうになっても軌道修正できているのでしょう。

お金がなければ稼げばいい、みんなで協力すればいい。5つもアルバイトを掛け持ちして、母の静養費を稼ぐリナの姿に心を打たれる周囲の人々。かつては犬猿の仲だった民ちゃんからクラスメイト、先生、みんながリナを助けます。思わず涙ぐんでしまうほどの厚い「人情」を、人のあたたかさを、これでもかというほど感じられるでしょう。

みどころ2

「昭和」が散りばめられた細やかな描写

空き缶やくず拾いをして生計を立てる民ちゃんの姿やアイスキャンデー売り、井戸水での洗顔、黒電話、渋谷駅前のプラネタリウム。ノスタルジアを思い起こさせるシーンの数々は、戦後確かにあった日本の姿です。薪を割って火を起こし、夕飯の支度をする1コマ1コマに懐かしさを感じながら読み進める人もいるのではないでしょうか。そんな暮らしのようすや喫茶店の雰囲気は、レトロさを感じられること間違いなし。当時を知らない現代の読者にも、きっと心に刺さるでしょう。

細かな描写で、何度も読み返す楽しさを読者に与えてくれるちばてつや。ニコニコ顔で家族を見守る白熱灯や0点のテストなど、遊び心あふれる表現から目が離せません。雪の降る長屋で家族がちゃぶ台を囲む場面では、決して豊かな生活ではなくても、あたたかさや幸せな気持ちが感じ取れるでしょう。

少女マンガらしい柔らかなタッチと、男性的な力強さが相まった絵柄。当時では珍しい「破天荒でおてんばな女の子」を見事に描き切っています。昭和の空気感やリナの心情、物語の緊張感。ちばてつやの思いが熱く響く本作は、今後も数々の名作を生み出す表現力・画力の萌芽が詰まった作品と言えるでしょう。

みどころ3

困難を乗り越え「どう生きるか」を問われる名作

『リナ』は平坦な物語ではありません。人の裏切りや予期せぬ病気など、波乱万丈な展開にハラハラしてしまうでしょう。しかし、物語を読み進めていくうちに、困難を乗り越えるための葛藤や選択が「自分事」として響く人は多いはず。単なるフィクションではなく、いつ・誰に降りかかるかわからない苦難をどう回避し、乗り越え、どう生きていくかが問われる名作です。

テレビ出演のチャンスを民ちゃんに譲ったり、短くても家族で過ごす時間を全力で楽しんだりするリナ。家族や友達など「大切にしていること」がハッキリしている彼女だから、貧困や病気の影を吹き飛ばす元気を感じられるのかもしれません。リナの強さは自己犠牲ではなく、人を思う心や愛があるからこそ生まれるもの。自己表現の追及や忙しさで人間関係が希薄になりがちな中、大切な人を守るために生きる彼女の姿勢は、令和の今も学びが多いと言えるでしょう。

悩みながら、涙しながらも一つずつ逆境を乗り越えていくリナたちの姿に、「これからどうするんだ?」「リナ、がんばれ!」と思わず声に出したくなるような没入感を味わえます。感情が強く揺さぶられるストーリー展開を、ぜひ最後までお楽しみください。

コミックス一覧