あした天気になあれ

あした天気になあれ

Release date 1980. 10

「チャ〜シュ〜メーン!」
「どうだ… うまく曲がってくれ!頼む!」

あらすじ

プロゴルファーを目指す中学生・向太陽が、荒川河川敷沿いのゴルフ場で練習生を務めながらプロテストを受験し、難コースや一癖も二癖もある他の受験者たちに揉まれながらも史上最年少でプロテストに合格。
その後プロゴルファーとしていくつもの大会に出場し、最終的にはセント・アンドルーズで開催された全英オープンゴルフに出場する。

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みどころ

みどころ1

大人も子供も楽しめる

時代の潮流の追い風も受けつつ、少年ゴルフマンガの金字塔として多くの読者に愛された本作。その最たる魅力は、やはり主人公・向太陽のキャラクターでしょう。感情豊かで時に破天荒、しかしだからこそ持ち前の強運と才能でドラマティックな物語を引き寄せる。そんな彼の活躍に、目を離すことができません。

本作が描かれた当時は少しずつ庶民の娯楽として広まり始めていたものの、ゴルフはまだまだ大人のスポーツという意識が根強かった時代。そんな大人向けの題材でありながらも、マンガそのものの設定には大勢の少年少女の心を掴む要素が満載となっています。子どもたちにとってどこか身近さを感じられる、アイコン的なキャラ造形の向太陽という主人公。彼がカリスマ的活躍でサクセスストーリーを駆け上がるという少年誌らしい展開。そしてキャッチーで印象的な「チャー・シュー・メン!」という掛け声など。

一見相反する主題と設定を絶妙なバランスでマッチングさせ、ここまで多くの読者に愛される名作へと昇華させる作品作りの力。それこそがちばてつやの、マンガ家としての魅力のひとつです。

見どころ1

みどころ2

リアルとフィクションのバランス

これまでにも『あしたのジョー』でボクシング、『おれは鉄兵』で剣道など、様々なスポーツマンガを描いてきたちばてつや。ですが、本作の『あした天気になあれ』で描くゴルフは上記の他作品とは異なり、先生ご自身が実際に親しんできた競技でもあります。そのため作中のプレー描写はリアリティのあるものばかり。太陽を始めとした登場人物たちの考えるコース攻略法や、プレー中に起きるちょっとした”あるある”な失敗など。ゴルフ経験者にとっては共感を、まったく知らない人にとっては「ゴルフってそんなことまで考えながらプレーするスポーツなんだ」という発見を物語の中で呼び起こしてくれるのが、本作の魅力です。

とはいえリアルな描写を追求しすぎると、物語としては面白みにかけてしまい、読者がおいてけぼりになることも。そんなゴルフ未経験者を飽きさせないポイントとなるのが、本作のマンガならではの非現実な要素です。リアルでは到底ありえないミラクルプレーに、攻略方法がシビアすぎる高難易度のコースなど。リアリティの中にほんの少し混ぜ込まれたフィクションが、ずばり今作のスパイス的役目を果たしているのです。

みどころ2

みどころ3

万人の共感を呼ぶ普遍的テーマ

ちばてつやの実体験に基づいた描写も魅力の今作。ですが実は当初、ゴルフマンガを描くことはまったく考えていなかったのだそう。その理由のひとつが「ゴルフはどこまでも自分自身との戦いであるメンタルスポーツ。そのためライバルとの直接対決といった、マンガとして映える描写は難しい」という考えがあったからでした。

そのようなゴルフという題材をの試合中のテクニック描写や試合の駆け引きで、マンガとしてのストーリーを盛り上げている本作。当初ちばてつやがは地味になってしまうと懸念していた”自身との戦い”の描写も、多くの読者から共感される作品の魅力のひとつになっています。

何かを成し遂げる際、真の敵は対峙する相手ではなく自分自身であるという価値観はスポーツに限らず様々な技術を磨く分野に普遍的に共通する物事の本質です。一見華やかでコミカルな、大人も子どももわかりやすく読めるゴルフマンガである本作。その裏に隠された万人の共感を呼ぶテーマこそが、ゴルフ好きに留まらない幅広い読者の方々から指示される理由かもしれません。

みどころ3

名言・名シーン

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