10月:島じゅうの気持ちを一つにする運動会──『島っ子』

2026.10.16

特集記事

10月:島じゅうの気持ちを一つにする運動会──『島っ子』

10月といえば、運動会の季節。ちばてつや作品の中でも、温かな空気をまとった『島っ子(全4巻)』には、心に残る運動会のシーンがあります。秋の青空の下で、主人公・小学5年生のミチをはじめ子どもたちが主役になる運動会。ぜひ本作とともに、人のぬくもりや自然の匂いを感じませんか。

島暮らしを通して感じる、子どもたちの友情と絆

舞台は絶海の孤島・鬼ヶ島。温泉の発掘作業のため、地質学者の父とともに一家で島へやってきたミチ。島の人々に「よそ者」だと言われながらも、諦めずに発掘作業を続け、少しずつ島での暮らしに溶け込んでいきます。

『あしたのジョー』や『のたり松太郎』のような、汗と血がたぎる熱い作品のイメージが強いちばてつや。しかし、読んでいるだけで心がほどけていくような、温かい空気をまとった作品も数多く描かれています。本作は島で暮らす子どもたちの毎日が、いきいきと描かれた作品です。温泉発掘の利権をめぐる大人の争いとは対照的に、自然の中でたくましく遊び、絆を深めていく子どもたち。

最初は壁があった仲間とも、自然の中でぶつかり合ううちに打ち解けていきます。大人の都合に振り回されながらも、たくましく生きるミチや島の子どもたち。その日常からは、どこまでも無邪気で、子どもらしく瑞々しい純粋さやパワフルさが伝わってきます。いつの間にかこの島と子どもたちが愛おしくなる──そんな魅力にあふれた名作です。

昭和の島の一大イベント!手作り運動会

運動会は、島全体の一大祭りです。大嵐の中、帰宅できない子どもたちと木下先生が、学校で練りに練った運動会の計画。しかし、家々が壊れて悲しみに暮れる島民たち。それでもミチたちは、開催を諦めません。

「暗い気持ちを少しでも明るくするために」──子どもたちの優しい気持ちが、団結力となります。最初は揉め事ばかりだった子どもたち。意見が合わなかったり、相手のことを素直に認められなかったり。そんな子どもたちが、運動会という一つの目標に向かって準備を進めるうちに、少しずつ距離を縮めていきます。

本作は、1968年のメキシコオリンピックが開催される前の作品ということもあり、ミチは聖火リレーをやろうと提案。他にも、障害物競走・玉入れ・騎馬戦・綱引き・仮装行列などなど、子どもたちが工夫を凝らし、楽しい運動会を実現しました。

最初は乗り気でなかった父兄たちも、いつの間にかみんな夢中に。我が子を応援するのはもちろん、子どもたちのパワーを分けてもらったかのように、いきいきとした表情になっていきます。

運動会を通して子どもたちが一回りも二回りも大きく成長していく姿、そして島民が笑顔になる姿はどこか懐かしく、現代を生きる私たちの心に深く沁み込んでいくでしょう。

“みんなで作った一日”は、心に残る

スマホで連絡を取り合うことも、SNSで情報を集めることもできない時代。だからこそ、みんなが直接顔を合わせて相談し、手を動かし、うまくいかないことも乗り越えながら、子どもたちの手で運動会を作り上げていきます。島っ子たちの運動会には、泥臭さと、やり遂げたときの達成感、そして理屈抜きの楽しさがぎゅっと詰まっています。

コスパ、タイパ──なんでも手早く、効率よく物事を進められる今の時代だからこそ、この「遠回りの豊かさ」が胸に沁みるのではないでしょうか。うまくいかないことも、ぶつかることもあります。それを全部ひっくるめてみんなで作ったと笑える、そんな時間が、かつては当たり前にありました。

今年の秋は、島の子どもたちと一緒に、運動会の一日を駆け抜けてみませんか。きっとページを閉じるころには、心がぽかぽかしているはずです。

他にも、本作には見どころが満載。

険悪だったクラスメイトがミチに加勢して助けたり、温和な父が娘のためについに激怒し、かばったりするシーン。真理子がミチの真っすぐな姿勢に襟を正すなど、じんわりと心に残る名場面ばかりです。

ぜひ、ぬくもりと熱気に満ちた昭和の島物語を、マンガ本編でお楽しみください。

▼島っ子 作品紹介ページ

https://chibatetsuya-ebooks.com/works/328.html